みちとの遭遇〜ほとんど映画日記〜

限りある人生の中で映画や本は自分の枠を超えた新たな経験を得られる場所。それは未知なる世界・・・。

51XDLAcMinL__SS500_.jpg原題:「SALVADOR」2006年・スペイン/イギリス(128分)
監督:マヌエル・ウエルガ
脚本:ユイス・アルカラーン
原作:フランセスク・エスクリバノ「サルバドールの朝―鉄環処刑された一アナキスト青年の物語」
出演・ダニエル・ブリュール/トリスタン・ウヨア/レオナルド・スバラグリア/ホエル・ホアン


1970年代初頭、フランコ独裁政権下のスペイン。自由を愛し正義感にあふれた青年サルバドール・ブッチ・アンティック(ダニエル・ブリュール)は、世の中を変えたいという純粋な気持ちから無政府主義グループに参加、反体制活動に関わるようになる。そして、活動資金を得るために銀行強盗にも手を染めることに。やがて警察にマークされたサルバドールは、ついに追い詰められ、激しい銃撃戦に巻き込まれる。その混乱の中、彼の撃った銃弾は若い警官を直撃、サルバドール自身も瀕死の重傷を負ってしまう。結局、撃たれた警官は死亡し、一命を取り留めたサルバドールは逮捕され、軍事法廷にかけられる。その後、死亡した警官には別の銃弾も残っていたことが明らかとなるが、死刑判決を覆すことは出来なかった。減刑を求める家族や世論の声もむなしく、死刑執行の時は刻一刻と迫っていくが…。(allcinemaより)

1978年、スペインでは憲法改正によって死刑制度が廃止された。
最後の執行は1974年3月2日、バルセロナの刑務所にて。
執行されたのはハインツ・チェス、そして本作の主人公サルバドール・ブッチ・アンティック。
彼は25歳の若さでその生涯を終えた。

本作の前半は彼が逮捕されるまでの反体制活動の様子を、後半は彼の死刑執行を中止させるべく弁護士が手を尽くす過程、そしてサルバドールと家族の交流が描かれている。
劇中で描かれる彼の素顔は家族思いの普通の青年のように見える。
不当な裁判は、彼を処罰したいがための策略にしか思えず、このようなことは独裁政権下では頻繁に行われていたのではないだろうか。
そして、不当な死刑はもちろんそのあまりにも残酷な処刑方法が衝撃的だ。

当事のスペインの死刑執行方法は鉄環絞首刑(ガテーロ)と呼ばれるもの。
拷問道具としても使われていたこの方法は、柱のような長い背もたれのある椅子に座らせた死刑囚の首を、背もたれに固定された鉄の輪で締め、後ろのネジを捻ることで首の骨を折るというもの。
スペインだけではなく、スペインの植民地でも使用され、フィリピンではスペインの殖民地からアメリカの植民地に変わった後も1926年に電気椅子が導入されるまで使用されていたそうだ。

「殺人に関する短いフィルム」(1987年)、「デッドマン・ウォーキング」(1995年)、「グリーンマイル」(1999年)、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000年)など生々しい処刑シーンが描かれている映画の中でも本作の処刑シーンはひときわ残酷に感じる。
このシーンを見れば、死刑制度に肯定的だった人も考え方が変わるのではないだろうか。
しかしながら、彼の死によって歴史が動き、彼の死が決して無駄ではなかったことを思うとあまりにも皮肉に思える。

また、劇中では主人公と家族がカタルーニャ語で話すことを看守に厳しく注意される場面がある。フランシスコ独裁政権下では地方語は激しい弾圧を受け、カタールニャ語も公的な場から追放され一部の公の場以外では一切の使用が禁止されていたそうだ。

「グッバイ、レーニン」「ベルリン、僕らの革命」のダニエル・ブリュールが好演している。
サルバトールの元恋人クカを「トーク・トゥ・ハー」で昏睡のバレリーナを演じたレオノール・ワトリング、サルバトールと心を通わせていく看守のヘススを「10億分の1の男」「ユートピア」のレオナルド・スバラグリアが演じている。

ところで、wowowでは128分の放送だったのだが、他のデーターでは135分となっている。7分の差は何なのだろうか。どこかカットされているのだろうか。

満足度★★★★
お薦め度★★★★

鉄環絞首刑(ガテーロ)
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ぎゃああああ〜〜〜

…ガテーロのねじ締め係にだけはなりたくない、と思うねぇ。。。

昔NHKドラマで観たドラマのシーンを思い出した。
吉行和子さんが「けらバァ」という役を演っていた。吉行さんはまだお若かっただろうけど、呼び名どおりそこそこ婆ぁで易者でもある。仲間うちの青年を占って「おぬしは○年生まれ(亥年、だったかな?何月何日、まであったかも)の女に殺される」と言う。まいったなァ〜〜女かァ〜とまんざらでもない男に「わしも○年生まれじゃぞ」「勘弁してくれよ」みたいなコメディタッチのシーンが後に伏線だったとわかる。彼らはやはり正義のために(少なくとも視聴者にはそう見える)活動しているんだけど、やがて男は捕えられ処刑と決まる。
処刑の方法は、関所のようなところの道端に首を残して埋められ、竹ののこぎりでそこを通る人たちがひと曳きずつしていく、という残酷なもの。竹ののこぎりは鋭利でないし、皆憐れみを覚えるので弱い力でしか曳けない。苦痛が長い刑。誰か、誰か殺してくれ、と泣き叫んだり呻いたり。。
やがてけら婆ぁが現れる(役人に仲間と知られると危険)。一般人のふりで男の首の側にかがむと「…占いが当たったな…今楽にしてやる…」とささやいて…

というシーン。やはりけら婆ぁには逡巡の間があるけど長くは迷わず顔を伏せ力を込めてひと曳き。男は苦痛のために意識が朦朧としていてけら婆ぁをけら婆ぁと認識できていたかどうか。

けらばぁはおおっぴらに泣くこともできない。

私は「必要があったら仲間(同胞・同志)を葬る勇気(?)を培わないと正しいと信じる道を進む権利もないんだ…」というようなことを考えました。

「生きる」ことってむつかしいね…


十二国記で陽子が慶国の人を殺める決心を持つところとも似てる。何もできないけどあなたたちの顔は忘れない、人を殺めなければならないだけの責任のある地位に就いたんだ、というところ。

2009.08.10 03:02 URL | つる #- [ 編集 ]

>つるさん
スティーヴン・キング原作の映画「グリーンマイル」では、冷酷な看守のせいで苦しみながら死ぬ死刑囚のシーンはトラウマになるんじゃないかと思うほど辛かったです。
ガテーロのねじ締め係にはなりたくないですね。この作品でもなかなか死なずにサルバドールが苦しむ姿はあまりにも痛々しかったです。

つるさんの言うドラマは「風と雲と虹と」(1976年)でDVDも発売されているようですね。
吉行和子さんが演じた役は、螻蛄(けら)・けら婆となっていますが、藤原純友(緒方拳)に通じている傀儡の一人とか。
逡巡の間というのは辛いですね。NHKドラマ「最後の戦犯」では上司の命令で捕虜を斬首するのですが、ためらいがあるために捕虜が苦しむというシーンがありました。

>私は「必要があったら仲間(同胞・同志)を葬る勇気(?)を培わないと正しいと信じる道を進む権利もないんだ…」というようなことを考えました。

平和の中で生活していると非現実的なことですが、もし戦乱の中であればまた違っていたかもしれないとも思います。できればそんなことが必要ない人生でありたいです。

2009.08.10 12:59 URL | みち #ucCaNy.Y [ 編集 ]












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