みちとの遭遇〜ほとんど映画日記〜

限りある人生の中で映画や本は自分の枠を超えた新たな経験を得られる場所。それは未知なる世界・・・。

崖の上のポニョ制作:2008年・日本(101分)
監督・脚本・原作:宮崎駿
声の出演:山口智子/長島一茂/天海祐希/土井洋輝/奈良柚莉愛





海辺の小さな町。海に棲むさかなの子ポニョが、人間の宗介と一緒に生きたいと願う物語。

観てきた人の意見は賛否両論。どちらかと言うと不満の声が多かったように思う。
まずは良くある意見について自分なりに考えてみた。

●宗介が父親を耕一、母親をリサと呼び捨てにすること。
父や母というのは一種の記号。なので個人の名で呼ぶことはおかしくはない。
人生の先輩としての礼儀は必要であるが、父は父であると同時に一人の男性であり、何より一人の人間である。母も同様。しかし、せめて「さん」づけはして欲しい。呼び捨ては確かにどうかと思う。

●母・リサの乱暴な運転・無謀な行動。
確かに危ない。しかしこれは男勝りのリサという人間の描写にすぎないと思う。
留守がちの夫の代わりに家を守らなければならない女性はこれくらい気が強くてもおかしくはない。そもそも、浜の人は気性が激しく運転が荒っぽい人が多い。

●母・リサが5歳の息子を残し家を出る
普通なら有りえない。
しかし、夫が家に居ないことが多いために、普段からリサは宗介に対して、一人でも大丈夫なように躾けていた可能性がある。実際、かなり宗介は大人びた言動をしている。

●母リサの気性の激しさ
むしろ人間らしいと思う。夫が帰って来ないと怒ってふて寝をし、愚痴をこぼす。
普通です。

ファンタジーの世界の中で、リサという大人の描写に違和感を抱いた人は多いかもしれない。しかし私はむしろ個性を上手く表現していると感じる。
そもそも、子供向けのファンタジーに出てくる親は子どもの見本でなければならないことはない。むしろこれは子どもの視点から見たリアルな大人を描いたように思える。

以上のことから私はそれほど違和感を感じず、最後までファンタジーの世界に浸ることができた。

何より深海の映像が素晴らしく、作り上げられた独自の世界が魅力的。
冒頭の深海の映像は一瞬、宇宙のようにも見え、生命の神秘を感じられたほど。
ボニョの母はアメリカ映画「アビス」(1989年)の海洋生命体のようにも感じ、またボニョの母を神秘的に、父親を人間味溢れる描写にしたのも宮崎監督らしい。
そして、ボニョはもちろん様々なキャラが良い。たくさんのボニョの妹達の映像は圧巻。
そしてその声を矢野顕子さんが担当していたと後で知り納得。

個人的に感動したのは宗介が、あるがままのボニョを受け入れていること。金魚のボニョも、人間のボニョも好き・・・というような台詞から枠に捉われない子供らしさを感じた。

監督がこだわった「子供の視点」は徹底されているように思う。
この作品がヴェネチア国際映画祭で絶賛されたのも納得できる。

驚いたのがラスト。エンドロールがなく「おしまい」と文字が出て終わり。あっけなかった。

満足度★★★
お薦め度★★★












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